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武田 全康; 鈴木 淳市; 山口 大輔; 秋屋 貴博*; 加藤 宏朗*; 宇根 康裕*; 佐川 眞人*
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Nd-Fe-B焼結磁石は、実用化されている永久磁石の中で最も強力なものであり、ハイブリッド自動車をはじめとする省エネ機器で広範囲に使われている。しかし、現状では、高温での使用において、希少金属であるDyの添加が必要不可欠である。そこで、Dyの使用量を著しく下げた、さらにはDyフリーのNd-Fe-B焼結磁石の開発が急務となっている。われわれは、保磁力機構の鍵を握る、主相の結晶粒の大きさと保磁力、また、界面ナノ構造と保磁力との間の定量的な相関に注目し、中性子小角散乱法を用いて調べてきた。この発表では、結晶粒径と焼結条件の違いによる、保磁力と中性子小角散乱パターンの変化について報告する。
中川 洋; 城地 保昌*; 北尾 彰朗*; 片岡 幹雄
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タンパク質ダイナミクスに対する水和効果を理解するために、脱水和状態,中間量の水和状態,水和状態の3つの異なる水和状態のスタフィロコッカルヌクレアーゼを用いて中性子非弾性散乱実験を行った。極低温において、高エネルギー振動である局所的な運動は水和に依存しなかったのに対し、5meVより低エネルギーの協調的な運動は水和に影響を受けることがわかった。この水和の影響はボソンピークの高エネルギーシフトとして観測され、このことはエネルギーランドスケープのローカルミニマムでの調和ポテンシャルがハードニングを起こすことを示している。240Kの動力学転移は水和タンパク質でのみ観測された。300Kで観られる顕著な準弾性散乱も水和タンパク質のみで観測され、これは転移の起源が水和水によって活性化される非調和運動であることを示している。中間量の水和状態のタンパク質の中性子散乱スペクトルは、100Kと200Kでは水和状態とほとんど同じであるが、300Kでは乾燥状態に近い。このことは中間量の水和は調和運動に十分に影響を与えるが、非調和運動に影響を与えるにはある閾値以上の水和量が必要であることを示す。水和は、調和運動と非調和運動の両者に影響を与えるが、その仕組みは異なっている。
及川 健一; 篠原 武尚; 林田 洋寿; 相澤 一也; 高田 慎一; 酒井 卓郎; 原田 正英; 前川 藤夫; 鈴木 淳市
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J-PARC, MLFの中性子源特性試験装置(NOBORU)では、昨年に続き装置グループが中性子特性試験を精力的に行うとともに、供用装置として採択課題を遂行してきた。採択されたプロジェクト課題の一つとして、原子力機構の3グループ及び北海道大学が協力して、パルス中性子の特徴を活かしたイメージング技術の開発を推進している。2009年10月、パルス中性子イメージングの強力な手法の一つであるBragg edgeにより生じる波長コントラストを利用し、水・氷の識別試験をNOBORUで行ったので、これを報告する。測定ではアルミニウムの試料ホルダー(10mmh40mm)にDOを封入し、これを冷凍機にセットして試料位置(L1=14m)に置き、室温及び250Kにてデータ取得を行った。検出器は、試料下流約40cmに2次元検出器(RPMT)をセットしイメージングを行い、2=170にHe検出器をセットしてdiffractionデータも同時に取得した。現在データ解析をすすめているが、詳細は当日の発表で報告する。
前川 藤夫; 篠原 武尚; 原田 正英; 及川 健一; 甲斐 哲也; 大井 元貴; 酒井 健二
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J-PARC/MLFの中性子源特性試験装置(BL10, NOBORU)では、原子力機構の3グループ及び北海道大学が協力し、プロジェクト課題の一つとしてパルス中性子の特徴を活かしたイメージング技術の開発を進めている。その1手法である共鳴吸収を利用したイメージングでは、被写体中の材料をある程度識別することが可能であると考えられ、従来のイメージング技術では得られなかった情報を得ることができる。本発表では、開発の第一歩として行った基礎実験の結果を報告する。金,タンタル,コバルト等の分離した大きな共鳴を有する元素を試料とし、NOBORUの試料位置(L=14m)に設置して中性子ビームを照射し、試料を透過した中性子のイメージを試料下流の2次元検出器により飛行時間で時間分解しながら測定した。その結果、共鳴エネルギーに相当する飛行時間のイメージに各試料の形状を確認することができ、本手法の原理が実証された。高時間・空間分解能を有する2次元検出器の開発等のパルス中性子イメージング共通の課題のほかに、本手法固有の課題として元素ごとに異なる共鳴ピークのエネルギーと断面積に依存する測定可能性と感度の決定があり、現在検討を進めている。
大井 元貴; 渡辺 聡彦; 酒井 健二; 坂元 眞一; 二川 正敏
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J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)が稼動し始めてから既に1年以上が経過している。MLFでは、ユーザーの利便性向上のためにMLFの運転情報配信システムの整備を進めている。ユーザー及び見学者への情報配信を目的として、MLF館内数か所に情報ディスプレイ及びパトライトを設置した。これらは、リアルタイムでビーム出力等の運転状態を知らせるためのシステムである。今後さらに、実験ホール内に電光掲示板を用いた情報配信システムの整備を進める予定である。また、おもに実験者が実験中に使用する情報として、電流値や電流履歴,水素温度状態,J-PARC全体の稼動状態を実験者自身のパソコン画面に呼び出せるWEBページを整備しており、電流履歴情報をデータベースから検索して呼び出すことをできるようにした。ただし、このWEBページはJ-LAN内に制限されているが、一般のすべてのパソコンや、携帯電話からMLFの運転状況を確認できるWEBページを準備中である。本発表では、これらMLF制御グループにより整備されているユーザーへの情報配信システムについて報告する。
熊田 高之; 能田 洋平; 橋本 竹治; 小泉 智
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動的核スピン偏極(DNP)法は、低温・強磁場下で偏極した電子スピンから周囲の核スピンに、磁気共鳴技術を用いて偏極移動することで、電子スピン並みの高い核偏極状態を得る手法である。中性子の水素核に対する散乱能は、互いのスピンの向きに非常に強く依存する。われわれはDNP法により、電子スピン近傍の水素核のみを選択的に偏極すれば、試料中における電子スピンの空間分布を反映した、偏極中性子の散乱が得られると考えた。従来のDNP法では、水素の核偏極状態はスピン拡散機構により、電子スピン近傍にはとどまらず、試料全体に拡散してしまう。そこでわれわれは、Paul Scherrer Inst.が開発した時間分解型DNP-SANS法を用いることで、スピン拡散する前の、電子スピン近傍に局在した偏極水素からの散乱を得ることに成功した。本手法は電子スピンのメソスケールの空間分布を決定できる初めての手法である。今後、本手法を放射線による物質・生物影響の研究に役立てたいと考えている。
前川 藤夫
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J-PARC物質・生命科学実験施設(MLF)の1MWパルス核破砕中性子源は、2008年5月に初中性子発生を迎え、2008年12月には一般供用を開始した。中性子源には高分解能のポイズン入り非結合型(PM),高時間積分中性子強度の結合型(CM),その中間性能の非結合型(DM)の3台の水素モデレータがある。われわれは中性子源の特性評価を行い、2つの世界最高性能を確認した。一つは、PMに設置された超高分解能粉末回折装置において、世界最高の分解能であるd/d=0.035%(dは結晶の格子面間隔)が達成されたことである。もう一つはCMの高い時間積分中性子強度であり、四季分光器において1MW出力換算の中性子束が約10[n/s/cm]に達した。この値は米国SNS(1.4MW)の数倍、またパルスあたりでは10倍近く、将来出力が1MWに近づけば世界最強となる見込みである。さらに10[n/s/cm]オーダーの中性子強度はJRR-3炉室の値と同等であり、原子炉中性子源を目標に大強度化を目指してきた加速器型中性子源が、時間平均強度においても原子炉に肩を並べ、さらにパルスピーク強度では数百倍に達することとなる。
梶本 亮一; 中村 充孝; 横尾 哲也*; 稲村 泰弘; 水野 文夫; 中島 健次; 高橋 伸明; 河村 聖子; 丸山 龍治; 曽山 和彦; et al.
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Fermiチョッパー型非弾性散乱装置「四季」は、楕円収束型ガイド管,大面積検出器,多重同時測定法等の先進的な仕様を備え、数百meV以下の領域において従来の同種の装置に比べて測定効率の大幅な向上を目指した装置である。昨年9月に最初の中性子ビームを受け入れて以来装置調整を続けていたが、今年6月に最初の非弾性散乱測定に成功した。まだ一部整備中の機器を残すものの、すでに多重同時測定の実証に成功するなど、順調な滑り出しを見せている。本発表では装置の基本性能,整備状況などをコミッショニングの結果を交えながら紹介する。
梶本 亮一; 松田 雅昌; 宇都 数馬*; 奥田 哲治*
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デラフォサイト酸化物CuCrOは二次元三角格子の一つとして古くから研究され、反強磁性転移温度以下でCrのスピン()が120構造をとることが知られている。近年、われわれはCr三角格子の面間に位置するCuをAgで置換することによる磁気相関の変化を比熱測定、中性子散乱実験等により調べ、Ag置換により二次元的、かつ、動的な磁気揺らぎが増大することを明らかにした。そこで、今回われわれはCr三角格子面内に直接非磁性イオンAlをドープすることで磁気相関がどのように変化するかを中性子回折実験、非弾性散乱実験によって調べた。実験には原子力機構の三軸型分光器TAS-2及びLTASを使用した。粉末回折プロファイルから、CuCrAlOではAl濃度が増加するにつれて二次元性が増大することがわかった。一方、非弾性成分はAgドープ試料に比べて小さかった。これらのことから、Alドープの効果はAgドープとは対照的に静的な二次元性を増大させるようである。
高橋 伸明; 柴田 薫; 中島 健次; 新井 正敏; 川北 至信*; 佐藤 卓*; 筑紫 格*; 中川 洋; 藤原 悟; Mezei, F.*; et al.
no journal, ,
DNAは、J-PARC物質・生命科学実験施設(MLF)BL02へ建設中のSi結晶アナライザー背面反射型中性子非弾性散乱実験装置である。本装置は、最も強度の高い結合型減速材を線源に選択し、パルス整形高速ディスクチョッパーを用いることで、大強度・高分解能(最高1eV)を狙った分光器である。チョッパーの開口時間の可変性を利用し、実験者の要求に応じた強度・分解能が選択可能となるよう設計されている。パルス整形は、高エネルギー分解能を得られる一方で、線源で発生する白色中性子ビームを切り出すことから、測定エネルギー範囲が40eV程度に制限される。本装置では、多孔ディスクを高速回転させることで生み出される複数のパルス整形された中性子ビームを用いて非弾性領域の測定を効率的に測定に用いる技術(RRM: Repetition Rate Multiplication)を合計3台の高速ディスクチョッパーを用いて実現するよう設計されている。本発表では、本実験装置におけるチョッパーシステムの設計指針と、RRM技術により生み出される効果を示す。
久保 純*; 久保田 悠美*; 岡田 晃典*; 呉田 昌俊; 飯倉 寛; 鈴木 裕士; 齊藤 徹*
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持続可能なモビリティ社会の発展に寄与するためエンジンのさらなる低燃費化開発が不可欠である。そこで中性子を利用して燃費に影響する抵抗や重量を低減するため、エンジン内部等の潤滑オイル挙動の可視化、また、部品薄肉化の検討に必要である内部残留応力の計測を行っている。高速度撮像中性子ラジオグラフィ技術を用い世界で初めて高速回転条件下における内部のオイル挙動の高速撮像に成功し、オイルの定量化解析を可能にした。また、シリンダーヘッドの材料ごとに内部残留応力を測定し、データベース化した。
伊藤 崇芳; 中谷 健; Harjo, S.; 阿部 淳; 有馬 寛; 盛合 敦; 相澤 一也; 安 芳次*; 仲吉 一男*; 千代 浩司*; et al.
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J-PARC物質・生命科学実験施設(MLF)の工学材料回折装置「匠」では、操作,解析のためのソフトウェアの改良,開発を続けている。工学材料の残留応力やひずみの測定を目的とした匠では、大学などの研究機関のみではなく、企業ユーザーによる幅広い利用を想定している。そのためソフトウェアは、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を備え、直感的な操作を可能とすることが求められている。この要求に応えるために、本装置を制御しデータの処理,解析を行うソフトウェア「絵巻」の開発,導入を行い、現在は絵巻を利用しての測定を行いながら、より操作性,視認性を向上させユーザーの負担を軽減させるように改良や新規の開発を行っている。今回の発表では、ゴニオメータ制御,連続測定,解析用データ処理のGUIソフトウェアや測定状況監視のためのオンラインヒストグラムモニタについて、どのような観点で開発を行っているかを中心に報告を行う。
Harjo, S.; 相澤 一也; 伊藤 崇芳; 有馬 寛; 阿部 淳; 盛合 敦
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J-PARC物質・生命科学実験施設(MLF)の工学材料回折装置「匠」は、物体内のひずみ又は応力の評価,変形及び熱的なプロセス中の構造変化の評価,製造過程及び使用中のその場測定や集合組織解析等のような材料工学分野の研究や産業利用を推進するために建設された装置である。匠のメイン機器の建設は今年度上旬にほぼ完成して、試料周辺環境整備のステージに移っている。本発表では匠の建設状況,コミッショニング結果、幾つかの成果及び今後の整備計画を報告する。
松田 雅昌; 大山 研司*; 吉居 俊輔*; 野尻 浩之*; 植田 浩明*; 上田 寛*; Regnault, L.-P.*; Vignole, B.*; Duc, F.*; Frings, P.*; et al.
no journal, ,
強いフラストレート磁性を示すスピネル磁性体CrO(:非磁性元素Zn, Cd, Hg)では1/2磁化プラトー状態が広い磁場領域で観測されており、スピン-格子相互作用に起因すると理論的に予測されている。これまでに、HgCrOにおいて1/2磁化プラトー状態(10T)での中性子回折及びX線回折実験が行われており、磁気構造,結晶構造ともにP432の対称性を持つことがわかっている。これは、スピン-格子相互作用により結晶歪みが磁気構造を安定化させていることを意味する。この機構がHgCrOに特有なのかCrOに共通しているかを調べるためには、他の物質での実験が必要であるが、候補物質のCdCrOでは28Tであり、従来の手法を用いての実験は困難であった。われわれは、最近開発された中性子散乱実験用パルス磁石を用いて、30Tまでの磁場中で中性子回折実験を行った。その結果、で(1,1,0)磁気ブラッグ反射が出現し、(2,2,0)磁気ブラッグ反射は観測されないことを明らかにした。
脇本 秀一
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最近の中性子非弾性散乱による鉄系超伝導体LafeAsOFの磁気励起の研究から、電子が過剰にドープされた領域ではフェルミ面のネスティング条件が悪くなることで、磁気揺らぎが抑制され、結果として超伝導が消失することが明らかになった。一方、銅酸化物高温超伝導体においても過剰ドープ領域で超伝導と磁気励起が同時に消滅する減少が見られるが、これはフェルミ面のネスティングによる効果ではなく、電子状態の相分離によるものである。これら2つの系から磁気揺らぎが高温超伝導に重要な寄与をしていることが明らかとなった。
井川 直樹; 田口 富嗣; 内海 渉
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Liイオン電池用正極材料LiCoOの金属イオンをMnやNiで置換することによって合成したLiCoNiMnOに関して、結晶構造変化やLiの伝導経路の金属置換効果について中性子回折法を用いて評価した。今回合成したLiCoNiMnOの結晶構造は六方晶構造(空間群:-3)であり、3, 3, 6の各サイトを各々Li,金属元素,酸素が占める。LiCoOではLiと金属サイトの間でイオンの相互置換がないが、このCoの一部をMnやNiで置換すると相互置換が発生する。Rietveld解析の結果、Co量の低下に従ってほぼ一様に相互置換量が増加し、LiCoNiMnOの置換率は約3.8%、Coを含まないLiNiOでは約15%にまで達することがわかった。また、MEMによって解析したLi伝導経路についても報告する。
伊藤 孝憲*; 平井 岳根*; Wang, Z.*; 森 昌史*; 井川 直樹
no journal, ,
600, 800Cにてアニールした電解質材料((Zr,Y)O, (Zr,Sc,Ce)O)の高温in-situ中性子回折測定を行いその結晶構造を解析した。600C,1000時間アニールした(Zr,Sc,Ce)OのMEM-リートベルト解析からアニールによって核散乱長密度分布の広がりが弱くなっていることがわかった。当日は他の結晶構造パラメータ、(Zr,Y)Oのアニール効果についても発表する。
藤田 泰裕*; 高橋 東之*; 佐久間 隆*; 井川 直樹
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高リチウム伝導体LiGe(PO)はNASICON構造を持ち、GeをAlで置換することにより体積伝導率が向上すると報告されている。本研究ではLiAlGe(PO)(x=0,0.5)の構造解析を行い、向上の要因を検討したLiAlGe(PO)はx=0及び0.5のいずれも空間群-3でフィッティングすることができた。LiGe(PO)のリチウムイオンは6(0,0,0)サイトを完全に占有せず、一部は18(x,0,1/4)サイトを占有する。LiAlGe(PO)では18サイトへの占有率が増加することなどが明らかになった。
阿部 淳; 服部 高典; 佐野 亜沙美; 有馬 寛; 深澤 裕; Harjo, S.; 伊藤 崇芳; 相澤 一也; 内海 渉; 小松 一生*; et al.
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J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)に建設された工学材料回折装置「匠」は、物体内のひずみ応力測定を目的とした装置であるが、90度検出器バンクを主体とする光学系や大型機器を搭載可能な試料ステージが高圧実験を行うにも都合の良いものになっており、われわれは、匠を用いて高圧下での中性子粉末回折実験を推進するための種々の試験開発を行っている。高圧発生装置としては、海外の中性子実験施設において汎用的に使用されている1軸圧縮型のパリ-エジンバラプレスと日本で開発された6方向から試料を加圧できるパームキュービックアンビルセルを用い、中性子実験用に新規開発中のダイヤモンドアンビルセルの使用も検討している。アンビル材や圧媒体の中性子実験への最適化などを含めた多くの装置開発を行うとともに、バックグラウンドを低減させるための遮蔽対策などを行うことにより、J-PARCにおいて、高圧下での粉末中性子回折実験が可能になった。本発表では匠でのこれまでの高圧実験結果と今後の計画について報告する。
佐野 亜沙美; 八木 健彦*; 小松 一生*; 栗林 貴弘*
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オリビンの高圧相であるワズレアイト((Mg,Fe)SiO)は地球のマントルの深さ410kmから520kmの遷移層上部において、体積にして約60%を占める「無水」の鉱物である。Smyth(1987)により最大で3.3wt.%もの水が含まれうることが予言されて以来、地球深部での水のリザーバーとして特に注目され、水素を含むことによってその電気伝導度や粘性,相境界などが大きく変化することが指摘されてきた。しかし水素結合の状態については赤外吸収スペクトルやラマンスペクトルといった分光学的手法や、X線を用いた結晶学的な情報などから推定されてきたにすぎない。本研究では重水素化したワズレアイトを合成し、中性子回折実験による水素位置の決定を試みた。実験はILLのD20で行い、マルチアンビル型高圧発生装置で17GPa, 1300Cで合成した40mgほどのワズレアイトについて中性子粉末回折パターンを収集し、リートベルト解析により構造の精密化を行った。また同じ試料について行った単結晶のX線構造解析の結果と合わせて、ワズレアイト中の水素位置について議論する。